気鋭の社会学者・周東美材さんと語り合った この国の「未熟さ」が示すもの
出版不況が叫ばれて久しいが、新刊の著者のトークイベントを毎日催して盛況の書店が、東京の下北沢にある。店名を「本屋B&B」という。一風変わったその名は本(Books)とビール(Beer)に由来する。実際にビールをはじめとしたドリンクを片手に読書したり、対談を楽しむことができるのだから、本好きの天国といわれるのもうなずける。
先週ぼくは実に7年ぶりにB&Bのイベントに出演した。気鋭の社会学者・周東美材(しゅうとう・よしき)さんが、あまたの実例を引用して日本のポピュラー音楽文化の特徴を論じた「『未熟さ』の系譜」(新潮社)の出版記念対談である。
周東さんは1980年生まれの42歳。童謡についてのユニークな研究で注目を集める存在だ。面識はなかったが、先述の新刊がとにかく面白かったので対談依頼を喜んで受諾した。
ぼくは実作者の立場から、この国の商業音楽に足りないものはメロウ、つまり成熟を求めるまなざしだと長年言いつづけてきた。周東さんは1回り下の世代だが、新刊では腑(ふ)に落ちるフレーズを連発していた。そんな著者に会ってみたいという個人的な興味も携えてB&Bに向かった。