ここからが圧巻だった。「お塩を入れすぎたからって砂糖を入れてもゼロにならない。だけど『あまじょっぱい』って複雑かつ深い味になるじゃないですか。だから、師匠が亡くなって悲しい、お子さんを授かってうれしいって、同時ですごい良いと思います」と、リスナーの困惑を全肯定してみせたのである。
伊集院さんの力強い言葉に、立川談志の名言「落語とは人間の業の肯定」を連想したリスナーはぼくだけではないだろう。
「ゆく人くる人、だから。師匠はさようならで、無事赤ちゃん産まれてようこそ、ということで」
スマホの向こうに後光がはっきりと見えた。