2022年ドラマ界を総括! 強い印象を残した“秀作5本”をメディア文化評論家が徹底解説
「個」としての生き方が問われた「エルピス」
最後は「エルピス─希望、あるいは災い─」(カンテレ制作・フジテレビ系)。アナウンサーの浅川恵那(長澤まさみ)とディレクターの岸本拓朗(真栄田郷敦)が、死刑囚の冤罪事件の真相を探っていく物語だ。
それは平坦な道ではなかった。テレビ局という組織独特の「常識」や「タブー」に揺さぶられ、さらに社会の闇というべき巨大な力に翻弄される。その過程で問われたのは「個」としての生き方だ。
制作陣は1990年に起きた「足利事件」など、現実の冤罪事件に関する文献を参考にしたと表明している。
冤罪事件は警察や裁判所など公権力の大失態だが、マスコミが発表報道に終始したのであれば、結果として冤罪に加担したことになる。
自分たちにも批判の矛先が向きかねないリスクを抱えながら、テレビ局を舞台にこうしたドラマを作るのは実に挑戦的だ。脚本は朝ドラ「カーネーション」などの渡辺あや。プロデューサーは、「17才の帝国」と同じ佐野亜裕美である。
来年も、作り手の強い意志を感じられる作品が、一本でも多く登場することを期待したい。