「レジェンド&バタフライ」の女性カメラマン芦澤明子が見た 映画界と木村拓哉・綾瀬はるか
木村拓哉、綾瀬はるかの突出したスター性
間近で撮影して木村拓哉、綾瀬はるかの突出したスター性を改めて感じたという。
「綾瀬さんは瞬発力がすごいんです。普段の彼女はどこかフワッとした感じがあるんですが、アクションが始まるとギュッと表情も動きも引き締まってエネルギーが出てくる。対して木村さんはアクションも見事ですが、持続力がすごい。16歳から49歳までの信長を、かなり計算して演じていたと思います。青年時代の軽い感じから、どんどん信長として変化していく。戦国武将は戦に勝つと、お城も替わるんですね。木村さんはお城が替わるたびに、立ち居振る舞いや芝居の雰囲気が違っていて、その繊細な表現はファインダーをのぞいてもわかりました。本当に全体の流れを考えて、持続力を持って役に臨んでいましたね」
撮影中、木村が出したアイデアを大友監督が採用することが、何度もあった。
「京の町へお忍びで、信長と濃姫が出かける場面があるんです。ここで木村さんは、史実で信長が好きだったという金平糖を登場させたらどうかとアイデアを出しました。それを受けて監督は、信長が金平糖を貧民街の子供に盗まれて、子供を追いかけた2人が乱闘に巻き込まれるという、騒動のきっかけに金平糖を使うことにしました。そんなふうに木村さんのアイデアが随所に生かされていますね」
アクションものではないと言うが、濃姫の所へ帰るために戦う本能寺の変の信長など、アクション自体はかなり盛り込まれている。
「そのアクションの所作の中に、例えば本能寺の変の信長なら『もっと濃姫と生きたいんだ』という、強い感情がこもっているんです。すべてのアクションを、そういう位置づけで監督も私も捉えていました。俳優さんたちもそれをわかっていて、情感表現としてのアクションを見せてくれました。木村さん、綾瀬さんはテレビドラマのイメージが強いかもしれませんが、この作品では映画俳優としての凄さを存分に披露したと思います」