(2)先代・林家三平の思い出「お父さんはみんなの三平さんなんだ」
人気者だった先代林家三平は、ファンを大事にする人だった。子供と歩いていても、ファンに声をかけられるとサービスしてしまう。
「人気者だからしかたないと思いながらも、父を人に取られちゃうような気持ちになりました。でも同時に、お父さんは子供たちだけのものじゃなくて、みんなの三平さんなんだと、子供心に感じましたね」
スターの子供というのは、そういうものなのかも知れない。
「ただ、子供たち全員、自転車に乗ることは父に教えてもらった。それと、授業参観、学芸会、運動会は、必ずちょっとだけ見に来てくれました。長い時間いると、また囲まれちゃいますから。今思い出すと、とっても優しかったなあ」
正蔵が遠くを見るような目をした。
「あんないい人いないですよ。優しくて、あったかくて、いいお父さんでした」
テレビで父親を見ていたのだろうか。
「父が出る番組は、家族とお弟子さん全員で見てました。放送時間が近づくと、おふくろが『みんな、集まんなさい』と声をかけ、テレビの前に座る。父が出たとたんに、全員正座です。当人は立ってしゃべってるのに(笑)。それに、何度も聞いてる小噺でも笑わないといけない。『パンツ、破れたね』『また(股)かい』でドッと受けるんです(笑)。『パンダは何が好き?』『パンだ』でまた笑う。そんなうちでした」