僕はどんな批判も「そういう意見もあるんだ」と受け入れちゃうんです
正蔵襲名の話が持ち上がった2004年は、歌舞伎界で中村勘九郎の勘三郎襲名が決まり、翌年披露興行が行われる予定だった。寄席の関係者が、落語界でも大名跡の襲名をと考えたのも当然であろう。
「おふくろは断ったんです。『あの子にまだそんな力はありません』って。すると鈴本の席亭さんが、『最近こぶ平さんの高座を見たら、お客さまの背中が椅子から離れて乗り出して聴いてるんです。良くなってます。可能性を感じるんです』と言ったとか。それで、おふくろも承諾したわけで」
05年3月、9代目林家正蔵襲名披露が催された。義兄の峰竜太が所属する石原プロのバックアップもあり、上野から浅草までのパレードや、仲見世での「お練り」など、派手な披露目が話題になった。
「それらのことも含めて、いろんな批判がありました。実力が伴ってないんですから、しかたありません。同時期に披露公演があった勘三郎さんとは違うんです。ただ、落語界のビッグイベントということで、寄席に行ったことのない方々が、見に来るきっかけになればと思ってました。でも、披露興行の高座に上がると、正蔵というめくりが返ったとたん、これ見よがしに席を立つお客さまもいましたね。大きな声で『つまんねえな』と言った方と、それを『無礼だ』ととがめた方とで喧嘩になったこともあります」