石橋静河「燕は戻ってこない」で考えさせられる…親子とは、夫婦とは、そして家族とは何なのか
石橋静河主演「燕は戻ってこない」(NHK)のテーマは代理出産だ。
毎回、冒頭に「現在、第三者の女性の子宮を用いる生殖医療『代理出産』について、国内の法は整備されていない。倫理的観点から、日本産科婦人科学会では本医療を認めていない」の文章が表示される。このドラマが、グレーゾーンにある微妙な医療行為を扱っていることへの配慮だ。
派遣社員のリキ(石橋)は経済的な苦しさから代理出産を引き受ける。依頼主は元バレエダンサーの草桶基(稲垣吾郎)と妻の悠子(内田有紀)だ。「代理母」として妊娠・出産すれば1000万円の報酬を得られるはずだが、内心は複雑だった。
更に自分勝手な論理でリキを縛ろうとする基。彼女を「産む機械」としか見ていない基の母(黒木瞳)。本心では代理出産に賛成できない悠子。リキを取り巻く人たちの思いも交錯していく。
原作は桐野夏生の同名小説だ。最近、「セクシー田中さん」(日本テレビ系)で原作者と脚本家の関係をめぐる問題が起きたが、本作については心配ない。原作の「核」となるものを、脚本がしっかりと反映しているからだ。朝ドラ「らんまん」などを手がけた長田育恵が、リキはもちろん、揺れ動く悠子の心理も丁寧にすくい上げる。
親子とは、夫婦とは、そして家族とは何なのか。デリケートかつスリリングな展開が続いている。