M-1グランプリの“競技漫才化”ますます加速…メリットとデメリットをラリー遠田氏が解説

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 今年で20回目となる漫才日本一決定戦「M-1グランプリ2024」(決勝戦は12月放送予定=ABC、テレビ朝日系)が開幕し、札幌・仙台・埼玉・東京・千葉・静岡・名古屋・大阪・広島・福岡・沖縄に新潟の計12地区で1回戦が行われた。

 エントリー数は、昨年の8540組から1790組増の1万330組。ちなみに2001年の第1回大会(優勝:中川家)の時は、エントリー数は1603組だった。

「2011~14年に大会が開催されない時期がありましたが、15年に復活して以降は、エントリー数は増え続け、特に20年以降は、毎年、およそ1000組ずつエントリーが増えているんです」(スポーツ紙芸能担当記者)

 出場資格は「プロ・アマ・所属事務所を問わず、結成15年以内のコンビ」。昨年の同大会の公式ガイドブックによれば、23年の“アマチュア参加者”は4000人を超えており、エントリーした約半分はアマチュアだった。

「近年は、お笑いサークル所属の学生芸人や社会人芸人、YouTuberら、アマチュア芸人の裾野が広がっており、普通の人が地域のマラソン大会にエントリーするようにM-1に参戦するようになっているので、そうしたことも影響しているでしょうね」(同前)

 実際、芸人だけでなく、タレントや漫画家、アイドルらの参戦もたびたび話題となる。

 それと同時に、1回戦「2分」、2回戦.3回戦「3分」、準々決勝・準決勝・敗者復活戦・決勝「4分」というネタ時間の厳しい制約の中で、ネタの内容、全体の構成、間やタイミング、そして一度も噛まずに完璧にボケとツッコミを連発させるM-1の“競技漫才化”はますます進んでいる。

 お笑い芸人を多数抱える芸能事務所関係者の話。

「ベテラン芸人などが舞台にあがる寄席の漫才では、最低でも10分、長いと20分の持ち時間があり、客の反応を見ながら、ゆるゆると笑いを大きくしていくのに対して、M-1の漫才は、スキルやその分析はますます先鋭化し“別物”と捉える向きも多い。昨年、M-1の漫才の傾向と対策を徹底分析して優勝した『令和ロマン』をはじめとして、今やベテランから歴代のファイナリストまで、多くの芸人が著書や番組でM-1の漫才について語っています」

■「M-1」向けの漫才ばかりが評価されるように

 その詳細は、歴代の王者や敗者復活戦のMCを担当してきた陣内智則らがM-1を語り尽くす「20回大会記念 永久保存版! 公式ガイドブックM-1グランプリ大全2001-2024」(ヨシモトブックス・ABCアーク/11月発売)に譲るとして、こうした背景について、お笑い評論家のラリー遠田氏はこう話す。

「『M-1』という大会が生まれたことで、そこで勝つためのネタ作りに芸人たちが真剣に取り組むようになり、全体的な漫才のレベルが上がったというのが、いわゆる“競技漫才化”のメリットだと思います。一方、デメリットとしては、世間でもそのような『M-1』向けの漫才ばかりが評価されるようになり、そうではないタイプの漫才が受け入れられにくくなっている、ということが挙げられるかもしれません」

 いずれにしても、20年以降は、視聴率(個人)は毎年、関東地区で12%、関西地区で20%を超え、まさに暮れの一大コンテンツに成長した「M-1グランプリ」。戦いの火蓋は切られたばかりだが、年末、1万330組の頂点に立っているのは誰なのか。

  ◇  ◇  ◇

ジャングルポケット」の斉藤慎二が報道時に「メンバー呼ばわりされることに対する違和感が広がっている。●関連記事【もっと読む】ジャンポケ斉藤慎二 書類送検で「メンバー」呼ばわりに識者が疑問呈す…ピン芸人なら何と報じる?…では、識者が違和感の正体を解説している。

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