放送での「バカ」の使い方、機転の利かし方…小倉智昭さんは“先生”のような存在だった
中継から局に戻ると、夜になるのに小倉さんがスタッフルームで待っていた。
「城下クン、ごめんよ。ちょっとした冗談だったんで、笑ってりゃよかったんだよ。真面目に捉え過ぎだ」
こう言って笑いながら帰っていった。
待つといえば、今から7年前もそうだった。僕が本を出版した時、ちょうどフジテレビの仕事があったので「とくダネ!」の生放送中にマネジャーに「小倉さんのことを書いた部分がありますので」と言って本を手渡した。
僕が仕事を終えて戻ってみると、小倉さんは生放送終了から3時間以上も経っているのに待っていてくれて、声をかけてくれた。
そして若い頃の僕にさまざまなことを教えてくれた。放送では「バカ」という言葉は使えないが、誰もがダメだと思える人物には「バカもバカ、大バカヤローだ」と言えば通用するのだという。
また、出演者の卒業写真を使う企画で、女性リポーターがうっかり写真を忘れてきたことがあった。すると小倉さんは「若い頃の写真は戦災で焼けたんだろう」と、彼女のミスを笑いに変えてやっていた。そういった「機転の利かし方もあるよ」と教えてくれたのだ。
「小倉のことは嫌いだという人たちが、ある程度いるくらいがちょうどいい。じゃないと目立たない」
そんな強がりも言う小倉さんは僕にとっては“先生”のような存在だった。合掌。