5年で4000例 腹水を“抜けば弱る”の常識を覆す最新治療法
そもそもCART法は、1981年に難治性腹水の治療法として保険承認された。
「濾過膜により、腹水からがん細胞や細菌などを取り除き、アルブミンとグロブリンの濃縮液を作って、患者の静脈内に戻す画期的な方法でした。しかし、①がん性腹水には細胞や粘液成分が多いため、1~2リットルで濾過膜が詰まって大量の腹水が処理できない②高い圧をかけて無理やり濾過するため、炎症物質が産出され、体内に戻すと高熱が出る、などの欠点があり、がん治療の現場から消えてしまいました」(松﨑氏)
松﨑センター長は、心臓外科医時代の体外循環、濾過膜研究の経験を生かして、腹水を濾過膜の内から外へ押し出す方式から、外から内に吸引する方式に改める一方で、内から生理食塩水を勢いよく注入して濾過膜を洗浄する工夫を施した。
その結果、炎症物質の産出が減り、処理時間も1リットル30分が9分に短縮され、発熱などの副作用も少なく、1回で20リットル以上まで安全に処理できるようになったという。
「国立がん研究センターやがん研有明病院から患者さんを紹介されるほど、安定した成績を挙げています。ただ、多くの医療関係者はまだまだ“CARTは危ない、効果がない”との思い込みがあり、患者さんに最新の治療法情報が届かないのは非常に残念です」(松﨑氏)
患者は企業や大病院の「大きな声」ばかり聞くのではなく、自ら情報を求める努力が必要だ。