「粗食がいい」は誤解 がんは賢く食べて抑える時代へ
末期がんというと、ガリガリに痩せた姿を思い浮かべる人が多いのではないか。この段階になると、体の中で代謝異常が起こって、筋肉などの合成以上に分解が進む、「悪液質」と呼ばれる状態に陥るからだ。
しかし、この悪液質を制御することで、がんと共生し、天寿を全うさせる研究が進んでいるという。国立がん研究センター研究所がん患者病態生理研究分野の上園保仁分野長に聞いた。
「がん治療というと、がん細胞を殺すことばかりに目を奪われがちですが、必要十分な栄養を供給して、体内の代謝のバランスを取り戻すことが大切だと考えています。がん患者さんの多くは、がんが直接原因で亡くなるのではなく、栄養不良により免疫低下が起こり、感染症などで亡くなるからです」
患者の栄養管理研究で知られる藤田保健衛生大学病院・外科・緩和医療学講座の東口髙志教授も近著「『がん』では死なない『がん患者』」(光文社新書)の中でがん患者のうち、がんが直接原因で亡くなる人は20%弱で、80%は栄養不良による感染症などで亡くなることを明らかにしている。