「粗食がいい」は誤解 がんは賢く食べて抑える時代へ
また、東口教授は同書の中で、余命1カ月の寝たきりの咽頭がんの患者に適切な栄養管理を施したところ、急回復して退院。5年間自宅で暮らした末に笑顔で亡くなった例も紹介している。
要するに、がんは賢く食べれば症状を抑えることが可能で、「がんは栄養を横取りするので粗食がいい」は誤解なのだ。
■食欲亢進ホルモンと同じ働きをする新薬開発も
「悪液質は重症の結核、糖尿病、エイズなど、がん以外にも見られる状態で、筋肉量が異常に減少し、痩せて衰弱するのが特徴です。ただ、がんは病期の移行スピードが速いため、がん悪液質はすぐに広がり、呼吸をするための肋間筋や咽頭・食道回りの筋肉が萎縮して、呼吸障害や嚥下障害などを起こすのです」
がん悪液質は1年で5%以上の体重減に加え、倦怠感や食欲不振などが表れることを言い、比較的容易に治せる「前悪液質」や、亡くなる直前で治療がほぼ不可能な「抵抗性悪液質」との3段階に分かれる。
日本では明治時代からその存在が知られていたが、その仕組みの解明が進んだのはここ10年ほど。