認知症とうつ病 見極めのカギは冷蔵庫チェックにあり
男女とも平均寿命80歳を超えるが、手がかからず健康でいられるのは70代まで。10年くらいは介護が必要だ。そこに認知症が絡んだら厄介だろう。しかし、親の物忘れの症状は、ひょっとするとうつ病のせいかもしれない。それなら、治るチャンスがある――。
伊藤さん(49)は、2年ほど前から父(75)の言動がおかしいことに気づいた。通帳やカギをしまった場所が分からなくなり、町内会の寄り合いをすっぽかしたり。財布が見つからなかった時は、「盗んだのか?」とののしられた。
「いよいよ認知症か」と重い気持ちで大学病院を受診したところ、思いもよらない診察結果に驚いた。
「認知機能を調べる知能評価テストの結果が良くて、CT検査では認知症に特徴的な脳の萎縮も見られませんでした。その結果から、『お父さんは高齢者のうつ病です。物忘れはうつ病による症状ですから、治療すれば良くなります』と言われたのです」
抗うつ薬のSSRIを2週間飲み続けると、物忘れの症状が少しずつ改善。1カ月後には、すっかり元の父親の姿に戻ったという。