肉体は死後どのように変化するのか
血流が途絶え、やがて死後15~25分後に、体の隅々まで行き届いていた酸素も欠乏する。細胞が酸欠状態になり、「肝臓」「腎臓」「呼吸器」「消化器」など体中にある臓器の活動が停止する。
その次に起こる肉体の変化は、これら臓器を形成している組織の死だ。その後、組織をつくっている細胞が死滅して、完全に生命を閉じることになる。
■直後は全身がゆ緩み、死斑は12時間後ピークに
ただ、体内にはエネルギーの放出や貯蔵をし、筋肉運動を担う化合物の「アデノシン三リン酸」(ATP)が残留している。死亡直後、全身の筋肉はいったん弛緩する。弛緩すると体内から「尿」や「便」「胃液」が排出される。
「亡くなった人の鼻などに綿を詰めるでしょう。これは、体内から排出される水っぽいものを防ぐためです」(大野教授)
それでは、死後に生じる「死斑」は、どうして起こるのか。
血液の循環が止まると、血液は重力によって体の低い位置に沈下してしまう。これが死斑だ。死亡から数時間後、沈下した死斑が紫色になって、皮膚の表面に現れる。死後12時間ほどで最も強くなる。司法解剖などでは、死亡推定時刻を調べるのに、この死斑の変化を参考にすることがある。