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佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

精巣腫瘍 薬だけで最も早く治せるがんになった

公開日: 更新日:

「精巣がん」ともいわれる「精巣腫瘍」は、精巣(睾丸)から発生したがんになります。肺にたくさんがんの転移を来したような場合でも、多くは抗がん剤「シスプラチン」と他剤との併用でがんが消失します。ですから、難治性の場合でも治癒を目指して治療が行われます。

 薬だけで、これほどの効果が得られたがんは他に見られません。20世紀における抗がん剤の最大の勝利がここにあったといっていいでしょう。

 1980年ごろのことになりますが、ある大学生が入院されました。肺にがんの転移が多数あり、精巣腫瘍からのがんだと分かりました。転移はどんどん大きくなっていくのですが、当時、使える抗がん剤では効果はありませんでした。その大学生の患者さんは3カ月ほどで呼吸困難を起こし、亡くなりました。

 その翌年、別の大学生がまた同じ状況で入院されて同様に亡くなりました。2人とも私が担当医でした。

 その約2年後、日本で「シスプラチン」が使えるようになりました。シスプラチンと他の抗がん剤との併用により、精巣腫瘍から肺などに転移していても1~2コースの治療で、転移はほとんど消えるようになったのです。また、その後の検討で、そうした患者の80%以上は治癒するようになりました。彼らの発病が2年遅れていたら助かったのに……と悔やまれます。

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