精巣腫瘍 薬だけで最も早く治せるがんになった
■転移していても、ほとんどが消える
ちょうどそのころ、カタコトの日本語しか話せない中東出身のEさん(33歳)が私のところにやってきました。右睾丸の腫脹に気づき、ある泌尿器科で切除したのですが、両側の肺に転移が多数認められたことで、紹介されてきたのです。
健康保険証は持っておらず、すでに超過滞在となっていたようでした。私は至急本国へ帰国することを勧めたのですが、Eさんから「私たちの国は戦争が続き、抗がん剤治療など無理です。ここで死んでもいいから治療して下さい」と涙ながらに訴えられました。
このままではEさんの命が危ない、そして開発された有効な治療法がここにある……。いろいろな議論がありましたが、結局、支援団体の声もあって、まず治療してみることになりました。そして、見事にたった1クールで肺の“影”はすべて消えたのです。
Eさんは、さらに治療コースを重ねてから帰国されました。余談になりますが、Eさんは入院中に担当していた看護師さんを「お嫁さんにして帰る」と言いだし、ビックリした看護師さんが逃げ隠れしていたのを思い出します。