早期ではほとんど症状が表れない 食道がんの知識と生存率
某社営業部長のSさん(56歳)は、1日にたばこ40本、酒は毎晩の付き合いでビールに始まり、ウイスキー、日本酒と続き、深夜0時すぎの帰宅は当たり前。そんな生活がもう20年以上続いているとのことでした。夜になると昼の穏やかさとは違って豪快になり、「自分は肺がんで死ぬんだ」とよく口にしていたそうです。
ある年、春に行われた会社の健康診断では、胸部エックス線写真には問題なく、肝機能異常を指摘されました。しかし、毎年のことで酒が原因だろうと考え、その後は診察を受けませんでした。ただ、秋になって、「声がかすれる」「食事がつっかえる」といった症状を訴えて来院されたのです。
体重は10キロ減り、流動物しか食べられなくなっていましたが、たばこと酒はやめられないようでした。むしろ「酒でカロリーを取っていた」と話されます。
そんなSさんを診察した際、左頚部に3センチ大のリンパ節が触れました。私はその硬さ、形から、すぐにがんの転移であることを確信しました。
案の定、内視鏡検査で上部食道にがんが見つかり、入院となったのです。