注目集まる「亜鉛」がこれからの肝硬変治療を変えるのか
「タンパク質が合成される過程で有毒なアンモニアが産生され、尿素回路という酵素群で無毒化されます。ところが、この尿素回路は亜鉛が欠乏すると正常に機能しない。するとアンモニアが処理できず血中で増え、結果的にタンパク質を合成する能力(タンパク代謝)が低下するのです」
■血中濃度維持で肝臓がん発症を抑制
つまり、タンパク代謝異常を示すアルブミン値3.5g/dl未満は、亜鉛欠乏を意味している。
肝疾患では、亜鉛がどれくらい欠乏しているのか? 片山医師は、肝硬変をA~Cでランク付けし、その中でもコントロール良好な人をA、状態が悪く生命予後が平均半年~1年の人をCとして調べた。
すると、A→B→Cと肝硬変の重症度が進むにつれ、亜鉛の値は低下。Aの一部だけが亜鉛の正常値の範囲に入ったが、BとCは亜鉛の正常値に「かすりもしない」レベルだった。亜鉛が欠乏している人は全体の65%、血中のアルブミン濃度が3.5g/dlより下の人は90%を占めた。
肝疾患、特に肝硬変に至ると、亜鉛欠乏でアンモニアが増え、肝臓のさまざまな機能が低下する。