筋力低下でがん死亡率上昇 「サルコペニア」をどう避ける
日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死亡する時代。いずれ自分もがんになることを覚悟する必要があるが、それに備えて健康なうちからやっておくべきことがある。筋肉量の維持だ。年を取るなどして筋肉量と筋力がどんどん低下する状態をサルコペニアと言う。歩く速度が遅くなったり、転倒・骨折の原因であることが知られているが、その状態でがん治療を受けると「死亡率が上昇する」という。産業医科大学第1外科講師の佐藤典宏医師に聞いた。
「これまでの研究で、サルコペニアがある患者さんは術後の合併症リスクが高くなり、生存率が低下することが報告されています。実際、937人の胃切除を受けた胃がん患者さんを対象にした海外の大規模なコホート研究では、サルコペニアがある患者さんでは重症の術後合併症が発生するリスクが3倍も高いことがわかっています」
そのリスクは驚くべきもので、複数の研究によると、サルコペニアがある患者では手術後の死亡リスクが、肝臓がんで3.19倍、すい臓がんで1.63倍、大腸がんで1.85倍、大腸がんの肝転移が2.69倍も高くなると報告されている。