医師の「様子見」が落とし穴 脂肪肝を甘く見てはいけない
「脂肪肝です。様子を見ましょう」と健診で言われたことはないだろうか? うのみにして大したことはないとタカをくくっていると、必ず泣きを見る。
毎年健診を受けていたのになぜ――。
横浜市立大学肝胆膵消化器病学教室主任教授の中島淳医師は、「肝硬変」と伝えた途端、愕然とした表情でそう口にする患者を何人も見てきたという。脂肪肝であることは知っていた。しかし、治療が必要だとは思ってもいなかった。なぜ、肝硬変に至るまで“放置”されたのか、と。
脂肪肝は、肝臓に中性脂肪が蓄積された状態だ。飲酒が関係する「アルコール性肝炎」と、飲酒が関係しない「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD=ナッフルディー)」がある。どちらも治療をしなければ肝細胞は破壊と修復を繰り返して硬く小さくなり(線維化)、肝硬変に至る。そして、肝臓がんを発症する。
「NAFLDの中でも炎症を伴う『非アルコール性脂肪肝炎(NASH)』は、肝がんへの進行スピードが速い。吐血など突然の異変で救急搬送されてきた患者さんを診ると、すでに肝硬変、肝がんを発症していたというケースも珍しくない」