人工骨はもう必要なしに? 「歯科インプラント」最新事情
2011年の調査によると60~64歳の平均残歯数は23本、80~84歳は13・6本だという。健康な人の歯は28本だから、60歳を過ぎると急激に歯を失うことになる。そうなると満足に食べられなくなるだけでなく、発音がおかしくなったり、見た目が悪くなったりする。結果、人前に出るのが嫌になり急速に老け込んでいく。それを避けるため歯科インプラントを選ぶ人が増えているが、その前治療として、やせた顎の骨(歯槽骨)を人工骨で補強してトラブルを起こすケースがあるという。そこで注目されているのが、人工骨を使わずにやせた歯槽骨を太くする治療法だ。自由診療歯科医師で、八重洲歯科クリニック(東京・京橋)の木村陽介院長に聞いた。
成人の8割が患っているという歯周病。歯の根元に進行するに従い、歯を支える顎の骨(歯槽骨)が溶け、やせ細っていく。そうなると、いざインプラントをしようとしても、インプラントを固定することができない。しかし、今は骨が薄い人でも治療法はある。
「骨が不足している場所に人工骨を充填して、数カ月後に天然骨になることを期待する治療法を骨造成といいます。サイナスリフト法はそのひとつです。奥歯の上あたりの上顎の骨には、上顎洞と呼ばれる空洞があります。通常インプラントは上顎洞の下の骨の部分に埋め込みますが、そこの骨が足りない場合は、上顎洞底面の粘膜(洞膜)を持ち上げて人工骨を挿入し、骨が定着するのを待つのです」