著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「かっけ」は日本海軍が行った世界初の臨床実験だった

公開日: 更新日:

 多くのかっけ患者を出した日本の軍艦「龍驤」が日本に戻った後、今度は戦艦「筑波」が航海に出ることになっていました。海軍軍医の高木兼寛は、「このままの食料で航海に出ればまたかっけが多発する。しかし、タンパク質を含む食事に切り替えれば、かっけが予防できるはずだ」と考えます。

 そこで筑波を、龍驤とまったく同じ航路で食事のみを変えて航海に出す実験を行います。人類史上初となる臨床実験の幕開けです。

 筑波の食事は、彼の仮説に基づいて、タンパク質不足を補うため、毎日肉300グラム以上、コンデンスミルク、ビスケットなどを含む洋食風に変えられました。そして出航から1カ月半後、龍驤と同じ航路をたどり、筑波がニュージーランドに到着します。この時点でのかっけの発生は4人、いずれも軽症との報告です。しかし、龍驤でもニュージーランドまでの航海では3人の患者が発生したのみで、この時点でかっけは減ってはいません。

 さらに問題が起こります。日本から持ち込んだ肉の缶詰が腐敗し使い物にならないというのです。ニュージーランドで調達した生肉もすぐに腐敗してしまいます。ただ、野菜、食肉、果物の缶詰、コンデンスミルク、砂糖などは十分補給でき、航海を続けます。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」