著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

まっとうな批判による健全な議論で「かっけ」撲滅が停滞

公開日: 更新日:

 日本で明治時代に起きた「かっけ」論争の続きです。

 日本海軍の軍医だった高木兼寛と同時代の医者の王道は、東京帝国大学医学部からドイツへ留学して、ドイツ医学を学んで日本に帰ってくるというものでした。高木の英国留学という経歴は、当時としては邪道であったわけです。

 その東大卒ドイツ医学の王道のトップに、陸軍軍医制度の確立に尽力した石黒忠悳がいます。石黒は「かっけばい菌説」を掲げ、高木の「タンパク質不足説」に反論します。石黒は、かっけは農民に少なく軍人に多いことを指摘し、「タンパク質不足が原因であれば、この事実が説明できない」と言います。さらに、地方より肉食の多い東京でかっけ患者が多いことも指摘します。確かに納得のいく反論です。

 さらに東大医学部教授の大沢謙二も、「栄養不足が原因であるなら、アイルランドのような貧しい国でかっけがまったくないことが説明できない」と主張。また、同じ土地でも年によって流行しないことがある点を指摘し、「タンパク質不足説」に反論します。食事を洋食に変えた戦艦「筑波」でのかっけの減少も、流行しなかったに過ぎないと説明することもできる。少なくとも栄養の問題ではないというわけです。これもまったく妥当な批判です。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」