心臓の悪性リンパ腫の手術でチーム医療の重要性を再確認
先日、「心臓の悪性リンパ腫」の手術を執刀しました。心臓外科医として独り立ちしてから二十数年間で初めて遭遇した非常にまれな疾患です。
患者さんは80代の女性で、心不全に似た症状があって来院されたようでした。近年は患者さんの全身状態を把握するため、術前にPET―CT検査を行う場合があります。そして、その患者さんもPET―CT検査をしたところ、心臓に悪性疾患らしきものがあることがわかったのです。
PETとは陽電子放出断層撮影のことで、放射性物質を含んだブドウ糖に近い成分の薬剤(FDG)を体内に投与し、薬剤が臓器などに取り込まれた状態を特殊なカメラで捉えて映像化します。がん細胞は活動が活発なため、通常細胞の3~8倍ほどのブドウ糖を取り込む特徴があります。そのため、病変があるところに薬剤が集積するので、がんが疑われる場所を推測できるのです。
術前検査の結果、その患者さんは心臓に薬剤の集積が認められました。ただ、この段階では「心臓に悪性疾患が疑われる腫瘍がある」ということがわかっただけで、悪性リンパ腫だと診断が確定したわけではありません。はっきりさせるためには、開胸手術で心臓の腫瘍を切除し、病理診断検査を行う必要がありました。