「最期まで治療したい」という患者の気持ちは人間として当然のこと
しかしながら、多くの患者はたとえホスピスに入っても、「生きたいという心」と「死の準備をすること」の間で揺れていて、いつもその葛藤の中にいるのだと思うのです。「死を覚悟しながらも、希望を持っていたい」のは人間として当然のことだと思います。
30年ほど前、日本で最初のホスピスを創設した原義雄氏は、その際にこう書かれています。
「家族にとり、本人にとり、少しでも長く愛する患者と共に生き続けることは、大きな喜びであるから……効果の期待できる治療は、たとえホスピスといえども試みるべきである。治る見込みがなく、将来、社会の戦力にならない者を生かし続けて何のメリットがあるか、無駄な努力ではないかという叱責もわかる。しかし、そうした意見は、医の倫理にもとる(反する)。欧米のホスピスでは、そうした努力を早くから放棄した。わたしは日本では、その真似はしたくないと痛感した」
しかし、いまは原先生が書かれたように“緩和病棟でがんの治療をする”なんて非常識だと言われそうです。もちろん、私は最後まで治療をすべきだと言っているのではないのですが、時代は変わりました。ただ、それでも本人の「生きたい」気持ち、息子が母を思う気持ちは変わらないと思います。