そんな矢先、事件が起きた。父が浴槽から出られないという電話が来た。溺れたワケではないが、自力で立ち上がれない。85キロの巨体を母が1人で引き上げることもできず。私が助けに行くにしても1時間半はかかる。仕方なく救急車を呼ぶことになった。父の筋力低下は、恐るべき勢いで進んでいたのだ。
実はその後も同様の状況になり、計3回救急車を呼んだ。うち1回は母が間違えて警察に電話して、「介護を苦に夫を殺害か」と疑われかけたこともある。
これを聞き、姉と私は本格的な介入を決意。長年の過保護は人間から自立心と意欲を奪う。頑張ってきた母を責めるつもりはないが、昭和的な夫婦のあり方は悲劇の温床だと思った。