認知症と診断されたら、これからどうすればいいのか?
認知症と診断されたのですが、これからどうすればいいのでしょうか--。患者さんやご家族からよく聞かれます。中には絶望感でいっぱいになっている方もいて、お話を伺うと、診断までは熱心にいろいろな質問を投げかけられ検査もされたが、その後は病名を告げられただけ、または薬を処方されただけで、「これから」について詳しい説明はなかった、とおっしゃるのです。
認知症で最も多くを占めるアルツハイマー病に対し、「早期発見、早期絶望」といわれた時代もありました。しかし現在は違います。症状を和らげる対症療法薬に加え、アルツハイマー病の原因物質に働きかける新薬も登場しています。さらには、認知症の進行を遅らせる「薬以外の対策」が研究によって明らかになってきているのです。認知症と診断されたら、薬物治療と「薬以外の対策」をしっかり行うことが重要です。
「認知症と診断されたら何をすべきか」について、軽度・中等度・高度・終末期の4つの段階に分けてお話ししたいと思います。軽度・中等度・高度・終末期で共通している内容もあれば、異なっている内容もあります。
まずは、認知症の軽度と診断された場合です。健康保険適用の治療として、大きく分けて2つのタイプの薬があります。ひとつは、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβに働きかける薬(レカネマブまたはケサンラ)です。国内では2023年と24年に認可された新しい薬で、病状の進行を遅らせることが期待されています。
これらの薬を使うにはいくつかの条件をクリアする必要があり、脳MRI検査、アミロイドPETもしくは腰椎穿刺によるバイオマーカー検査は必須です。中等度以降の患者さんには使えない薬でもあります。
もうひとつのタイプは、記憶に関する物質アセチルコリンを補充し、症状の緩和が期待できる薬です。アリセプト、レミニール、イクセロンパッチとリバスタッチ(イクセロンパッチとリバスタッチは会社が違うだけで同じ薬)という3種類の薬があります。対症療法薬ではあるものの、日々の生活の中の物忘れ、元気のなさ、興味や意欲の喪失などが改善され、「過ごしやすくなった」という患者さんは少なくありません。