言語発達に関連 上手にしゃべれるか否かを決める遺伝子も
遺伝子的に似通っているチンパンジーにすらその能力がないのに、なぜ人間だけが言葉を話せるのか? その答えとして注目されているのがFOXP2遺伝子である。
そもそも言葉が可能になるのは、例えば「みかん」という音の記憶と、ミカンの映像の記憶を脳内で結びつける必要がある。これを可能にする脳をつくり出すひとつがFOXP2遺伝子だ。国際医療福祉大学病院内科学の一石英一郎教授が言う。
「FOXP2は世界で初めて発見されたヒトの言語発達に関連する遺伝子です。パキスタンのKE家の家系の半数に言語障害があったため、家族のゲノムを調べたところ、正常な人と比べてDNAの塩基配列がわずか1文字違っていたのです。むろん、言語に関連する遺伝子はこれだけではありませんが、そのひとつと考えられているのです」
FOXP2遺伝子とはフォックス遺伝子ファミリーと呼ばれる転写因子群のひとつ。DNAに特異的に結合するタンパク質で、その働きはDNAの遺伝情報をRNAに転写する過程を促進、または抑制することにある。いわば遺伝子のスイッチで、オン・オフをつかさどる。