言語発達に関連 上手にしゃべれるか否かを決める遺伝子も
「言語障害のある人はFOXP2遺伝子は転座など何らかの理由によって破壊されたと考えられています」(一石教授)
転座とは染色体異常のひとつで、染色体の一部が切断されて、同じ染色体の他の部分に付着・融合することをいう。ヒトのFOXP2遺伝子に変異が起こると脳の発達異常が起こり、言語障害になるという。
では、このFOXP2遺伝子はヒトにのみ存在するのか?
「そうではありません。脊椎動物には広く存在しています。例えばヒトとチンパンジーでは、FOXP2遺伝子がつくり出すタンパク質がアミノ酸2個分異なるだけであることがわかっています。つまり、この2つのアミノ酸の違いがしゃべれる脳になるか、否かの違いというわけです」(一石教授)
実際に両者の細胞を培養させて比べたところ、ヒトのFOXP2遺伝子はチンパンジーのそれと比べて、61個の遺伝子を活発化させ、逆に55個の遺伝子の働きを抑えるとされる。
「サルに近い容姿を持つネアンデルタール人はしゃべれたのかという疑問がありますが、現代人と同じDNA配列を持っていることからしゃべる能力があったと考えられています」
ちなみにこのFOXP2遺伝子は脳の発達に関係しているため、自閉症や難読症の引き金になるとの見方もあるという。