著者のコラム一覧
玉置妙憂看護師・僧侶

東京都生まれ、53歳。専修大学法学部卒業後、法律事務所に勤務。長男の重い病気が動機になり30歳の時、看護師資格を取得。46歳の時に、がん闘病の主人を自宅でみとった後、高野山真言宗に得度した。臨床宗教師としても講演、執筆活動を行っている。「大慈学苑」主宰。

主人は仕事を選び、枯れ木が静かに倒れるように亡くなった

公開日: 更新日:

 臨終間もない人に無理やり水を飲ませ、あるいは過剰な点滴をするなど、まったく不必要なことも行われている。

 そうした死の現場で、常に人の死について考えてきた玉置さんは、近年、「死」が日常から遠く離れていっているような気がした。

 医療機関に「老」「病」「死」を丸投げするようになり、死の存在自体をリアルに感じられない家族が増えているからである。

 玉置さんは、7年前に最愛の夫を自宅でみとったことが自らの「死生観」を確固たるものにした。

 再発がんの治療に背を向けた主人は、入院や副作用に苦しむ抗がん剤の服用も拒否。自宅で寝起きしながらカメラマンとしての仕事を貫き通し、家族にみとられながら62歳の人生の幕を閉じた。

「自宅で亡くなる人は、およそ10%といわれています。主人もそのひとりでした。本人の意思で、死ぬまで好きな酒を飲みながら仕事を選択したのです。ちょうど枯れ木が静かに倒れていくようにして身を横たえ、目を閉じました。自然体のままの死に方です。最高に近い死に方ではなかったでしょうか。もちろん終末治療を否定するわけではありません。でも最期をどう迎えるかは、何よりも本人の幸せを考えてあげて、まず本人の意思を尊重してあげることでしょうか」

【連載】看護師僧侶「死にゆく人の心構えと接し方」

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ

  2. 2

    大友康平「HOUND DOG」45周年ライブで観客からヤジ! 同い年の仲良しサザン桑田佳祐と比較されがちなワケ

  3. 3

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  4. 4

    大阪万博開幕まで2週間、パビリオン未完成で“見切り発車”へ…現場作業員が「絶対間に合わない」と断言

  5. 5

    マイナ保険証「期限切れ」迫る1580万件…不親切な「電子証明書5年更新」で資格無効多発の恐れ

  1. 6

    阪神・西勇輝いよいよ崖っぷち…ベテランの矜持すら見せられず大炎上に藤川監督は強権発動

  2. 7

    歌手・中孝介が銭湯で「やった」こと…不同意性行容疑で現行犯逮捕

  3. 8

    Mrs.GREEN APPLEのアイドル化が止まらない…熱愛報道と俳優業加速で新旧ファンが対立も

  4. 9

    「夢の超特急」計画の裏で住民困惑…愛知県春日井市で田んぼ・池・井戸が突然枯れた!

  5. 10

    早実初等部が慶応幼稚舎に太刀打ちできない「伝統」以外の決定的な差