「標準治療」には患者の意志が尊重されているのだろうか
がんの治療は、新薬がどんどん開発されるなどで大きく進歩しました。また、15年ほど前からはガイドラインが普及し、標準治療として全国どこでも高いレベルの診療が受けられるようになりました。
ただ時々、疑問に思うことがあります。「標準治療」というものが、あたかも金科玉条のように考えられているように感じる場面があるのです。
ガイドラインを作成した時は、「治療の適応についての目安を提供する。ガイドラインと異なる治療法を施行することを規制するものではない」としました。ところが、「標準治療が効かなくなったら、あるいは標準治療に当てはまらなかったら緩和を勧める。それでなんら問題はない」と言われるかもしれませんが、はたして、それでがん患者本人の「治りたい」という意志は尊重されているのでしょうか?
たとえば、病状からしてこのままでは命がなくなるのは明らかだ。それなら頑張ってみよう。やってみなければ分からないし、大変かもしれないが助かるかもしれない――そんな場面での“挑戦”が少なくなっているのではないか。そのような気がするのです。