COPDの新たなメカニズム解明 新治療法の登場につながるか
「たばこの有害物質で気管や肺胞に慢性炎症が起こり、肺胞が酸素を取り込めなくなる病気とは分かっていましたが、炎症は強いものではなく、これが原因か、それともCOPDによる結果か、メカニズムがはっきりしていませんでした。だから完治につながる治療法もありませんでした」
対症療法しかなく、初診時にすでに重度の患者も多いので、死に向かうのをわずかに遅らせるだけ……という患者も珍しくなかった。
■有効な治療ターゲットになりえる2つのポイント
今回、皆川医師らが発表した内容は、ごく簡単に言うと、「たばこの有害物質によって、肺の細胞内にある本来無害な鉄が有害な鉄へ分解。それによって細胞膜を構成する脂質が酸化し、細胞死に至り、COPDを発症する」。
「もともとCOPDの患者の肺では、喫煙で肺の上皮細胞が障害され、細胞死が存在することは明らかになっていました。このメカニズムを解明したことになります。まずは、細胞死には鉄とリン脂質が関係していて、有害な遊離鉄によって細胞膜のリン脂質が酸化し、細胞死を引き起こす“フェロトーシス”が生じる(図中(1))。では、有害な遊離鉄はどうしてできるのか? 本来、細胞内の鉄はフェリチンという安定・無害な状態で貯蔵されていますが、細胞内タンパクの分解機能オートファジー機構で有害な遊離鉄へと分解されるのです」