こんにゃくは徹底的に水分を抜く下処理で有害物質も排出
格好のダイエット食に入っている黒いツブツブの正体
こんにゃくの中に入っている黒いツブツブは一体何でしょう? この質問は、私も時々出演しているNHKの人気番組「チコちゃんに叱られる!」で出題され、誰も答えられず、チコちゃんに「ボーっと生きてんじゃねーよ!」とどやされることになったのだが、答えは、意外なことに「ひじき」である。
こんにゃくになぜ、ひじきが入っているのか。それを知るためには、そもそもこんにゃくの製法をおさらいする必要がある。こんにゃくはコンニャクイモ(というサトイモの仲間)の地下茎に含まれるコンニャクマンナンという多糖類から作られる。コンニャクイモの原産国はインドから東南アジアの地域。読んで字のごとく糖をたくさん含んでいるのだが、ジャガイモやサツマイモに含まれる多糖類(デンプン)とは違って、人間の消化酵素で分解することができない。だから栄養源としては価値がない。
昔人はそれでも何かの足しになると考えたのだろうか。あるいは独特のプリプリした食感が面白いと感じたのか、アジア圏の風土食となって日本にも伝わった。古くは飛鳥時代に記録があり、鎌倉時代には食材として普及し、精進料理に用いられるようになった。ほぼゼロカロリー、かつ、腹の中に入ると水を吸って膨張するので、満腹感をもたらすことが奏功し、現代では格好のダイエット食品としてもてはやされるようになった。昔は、コンニャクイモを皮ごとじかにすりおろして製造されていたため、皮の断片が混じって独特の風合いを持っていた。精製した粉は長持ちするので、後に、粉から作るコンニャク製法が普及したが、その際、彩りづけとしてひじきや海藻を入れる習慣ができたという。これでいいですよね、チコちゃん。
▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。
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