膝がポキポキ鳴る…変形性膝関節症のサインって本当なの?
しゃがんだり、立ち上がった瞬間、膝が「ポキポキ」「バキバキ」と鳴る。痛いわけではないが「膝に異常が起きているのではないか」と心配になってしまう。膝からの音は膝の病気のサインなのか?「みずい整形外科」(東京・祐天寺)の水井睦院長に聞いた。
一昨年の医学雑誌「Arthritis Care&Research」(電子版)に米国のベイラー医科大学などの研究チームから気になる研究結果が報告された。変形性膝関節症でない3495人を対象に「膝のポキポキ音と変形性膝関節症の発症との関連」を追跡調査したところ、いつも膝がポキポキ鳴る人はそうでない人に比べて将来、痛みを伴う変形性膝関節症の発症リスクが3倍高かったという。「まれにある」「時々ある」「頻繁にある」はそれぞれ1.5倍、1.8倍、2.2倍高かった。
変形性膝関節症は加齢に伴って増え、膝の痛みの原因のなかで最も多い病気だ。足の筋肉が低下している人、肥満の人などがかかりやすく、痛みが強まるだけでなく、膝関節が変形して歩きにくくなる。結果、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を誘引しやすいことが知られている。
「膝関節とは太ももの太い骨(大腿骨)と脛の骨(脛骨)に膝の“お皿の骨”(膝蓋骨)が組み合わさってできています。立ったり、座ったり、歩いたりすると大きな負担がかかり、例えば歩行している時には、体重の約2~3倍の力が加わります。体重60キロの人なら約120~180キロの負担がかかる計算です。これが長く続くと大腿骨と脛骨が直接ぶつかり、その間にある半月板が弾力性を失い、変形したり、すり減ったりします。その結果、階段を上るなど膝に負担がかかると痛みが出るようなる。これが変形性膝関節症です」
なぜ膝がポキポキと鳴るのか。そのメカニズムはいまだにハッキリとはわかっていない。有力なのはキャビテーションと呼ばれる現象ではないか、という説だ。
「膝関節にはそれを覆っている関節包と呼ばれる袋の中に関節腔という空間があります。有力なのは、膝関節を曲げるときに関節腔の中にある関節液(滑液)が圧力を受け、中の空気が炭酸飲料のような気泡を生じ、その気泡が弾ける衝撃音という説です」
とはいえ、膝から音がするからといって、過剰に怖がる必要はない。キャビテーションは誰にでもあることだ。
「音が単発だったり、膝の動きに支障がなかったり、痛みや腫れがなければ特に問題ありません。心配なのは慢性的に音がしたり、痛みや熱があったり、膝の動きが悪くなったり、音が徐々に大きくなったり、違う音がするなどした場合です」
例えば膝を動かすと「ゴリッ」という音がして、痛みや違和感があるときは膝蓋軟骨軟化症の可能性がある。膝の使いすぎで関節軟骨が変形してしまう病気で、運動選手などが発症しやすいという。膝の内側に痛みがあり、膝の皿の内側に親指を当てて膝の曲げ伸ばしをしたときに、コキコキ、ポキポキという音がする場合は、タナ障害が疑われる。タナとは膝蓋骨と大腿骨の間のヒダのことで、膝の屈伸や打撲でタナがずれて、炎症を起こすことを指す。
「こうした痛みを伴う音の鳴る膝は速やかに整形外科医に診てもらい、治療しましょう。それと同時に悪化させない日常の動作に気を配らなければなりません。長時間の歩行を避け、階段も手すりを使うなどして、膝への負担がかからないよう工夫することが大切です」