「脈が触れる」ご遺体の手首に手を当てた看護師が呟いた
A医師は「ん……?」と漏らした後、足の付け根(鼠径部)に触れて「脈は触れないよ」と口にしました。そして、瞳孔が開いているのを確認し、聴診器で心音は聞こえないことも確かめました。念のため心電図を付けましたが、心臓の波形はありません。心臓は動いていなかったのです。
A医師と看護師は、ご遺体に向かって「お騒がせしてすみませんでした」と一緒に頭を下げて謝りました。その後、ナースステーションに戻ってきたA医師は「ハアーッ」と大きく息を吐き、「オレ、まさか心臓が動いている患者さんに『ご臨終です』と言ってしまったのかと思ってしまったよ。まあ、Mちゃんだもんな……」と漏らしました。後でMさんは看護師長に叱られていました。
■自分自身の脈を感じてしまう場合がある
ショックなどで血圧が下がった状態では脈が触れにくくなります。この時、手首の橈骨動脈を探していて、患者さんの脈が分からず、間違えて自分自身の脈を感じてしまう場合があるのです。今回、患者さんはすでに亡くなられて脈がないのに、Mさんは自分の脈を感じてしまったのです。