血液サラサラ 旬のサンマは塩焼き以外の調理法で老化防止
栄養を貯蔵した季節の恵みで血液サラサラ
食欲の秋。秋に食べ物がおいしくなるのにはちゃんと生物学的な理由がある。植物も魚も動物もみな、来るべき冬に備えて栄養を蓄積・貯蔵し、また次世代をつくるための種や実をみのらせ、あるいは卵をはらむ。脂が乗ったサンマの旬はまさにこの季節の恵み。
私は米国での研究生活が長かったせいで、食べ物の「旬」を大切にする日本人の食文化をたいへんすばらしいものだと深く感じている。春にはタケノコや芽吹きたての山菜、初夏にはカツオ、夏はアユ、秋には、もちろん今回のサンマの他、たとえばマツタケ、冬には鍋物、といった「旬」感覚が、アメリカの食生活にはかなり乏しい。
小泉進次郎氏がNYに行ってまず食べたというステーキは一年中どこにでもあって、特に旬という時期もない。旬があることがどれほど食文化を豊かにしていることか。いま一度噛み締めたい。
さて、サンマは煮ても焼いてもおいしい。身がほろほろと外れやすいので子どもでも食べやすい。小さいうちから日本の食文化をしっかり味わっておいてもらいたいもの。もちろん栄養価的にもすぐれており、青魚なので、心臓血管系の疾患を予防する不飽和脂肪酸(いわゆる血液をサラサラにする成分)に富んでいる。
ちなみに、秋が食欲の季節であるもうひとつの理由は、私たち人間自身も生物だからである。寒い冬に備えて、豊富な栄養をたくさん摂取しておきたいという本能はいまだに私たちの遺伝子の中に刻み込まれている。
▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。
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