基礎代謝が低下した高齢者はかつてない夏にどう備えるか
マスクをしたまま夏を過ごすという前例のない状況で、今年は熱中症が例年になく増えることも予想される。帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長で、環境省「熱中症予防声かけプロジェクト」の実行委員長を務める、同大学医学部救急医学講座の三宅康史教授に話を聞いた。
「熱中症による死亡例が特に多いのは65歳以上の高齢者で、なかでも、ひとり暮らしで社会的に孤立している人は、ふだんから水分をあまり摂取しておらず、熱中症になる可能性が高まります。高齢化と貧困化、孤立化の進行は、すべて熱中症には不利に働きますね」
窓を開けていても、炎天下に駐車している車は中が暑くなるように、猛暑にはマンションやアパートの室温も上がってくる。熱帯夜には窓を開けても熱風しか入ってこない。基礎代謝が低い高齢者は基本的に寒がりで、これを暖かくて居心地がいいと感じてしまうため、高温の部屋で3日も過ごした結果、救急車で運ばれるというケースが多いという。
「高齢者は昔は夏でもクーラーなしで過ごしていた人が多く、クーラー嫌いの人が多い。けれど、地球温暖化が進んでいる今の夏は、かつての涼しい夏とは違うんです。クーラーのかけすぎもかえって体によくないですが、弱めにクーラーをつけた上に窓を開けて扇風機で循環させるとか、寝る前にクーラーで部屋を冷やしてから、切って寝るとか、上手なクーラーの使い方をして、体調を管理したほうがいいですね」