新型コロナ<8>「まだウイルスがしっかりと残っています」
「退院の延長と聞いて少しがっかり。でも、延期をプラス思考にとらえました。健康状態に戻り、退院して自宅で療養したら、おそらく外出するかもしれません。それならやはり病院の管理下に置かれた方がいいのではと思いました」
風邪やインフルエンザは、解熱剤などの治療で3日か長くて1週間でほぼ完治する。一方、この新型コロナウイルスは、増幅しながら感染して20日過ぎてもしつこく体内にすみ、薬も寄せ付けない。最悪、重症化したら心肺停止のカウントダウンに入る。
「強敵なウイルス」とあらためて恐怖を感じる一方で、渡辺さんは退院の際、支払う入院費用について看護師に尋ねてみた。
「入院費は公費で賄いますが、検査費用は自己負担になります」
翌日の7日、病室で、安倍首相が発令した「緊急事態宣言」を知った。不要不急以外は外出することなくステイホームしなさいという要請、あるいは指示である。
でも……と、感染して生き地獄の苦しみを体験した渡辺さんは言う。
「政府の対策は甘いのではないでしょうか。今、この新型コロナウイルスの感染を断ち切り、国民の生命を守るためには『外出を禁止する』と声明を出すべきです」
当時も今も渡辺さんはそう思っているという。=つづく