新型コロナ<8>「まだウイルスがしっかりと残っています」
体内の新型コロナウイルスが死滅し、いつ退院できるのだろうか――。
感染した渡辺一誠さん(40=コンサルタント会社社長)は、都内の病院に入院した初日から、早く完治して退院の日が来ることを願った。
4月6日早朝、看護師から、明るい声で「退院のために検査いたしますよ」と朗報が告げられた。
前日もPCR検査を受けた。鼻にグイと棒を入れられる検査が苦手な渡辺さんは、看護師のOKをもらって「痰」の生体提供をした。
続いて、2日続きで2度目のPCR検査が行われた。発症から16日目、入院してから10日が経過し、陰性なら待望の退院だ。
結果が待ち遠しい。しかし、病室に入ってきた看護師の顔はやや曇りがちだった。
「渡辺さん、2日間とも『陽性』でした。まだコロナウイルスがしっかりと残っています」
退院はくじかれ、入院治療を引き延ばしにされた。この朝、洗面用具の整理など退院の準備をしていたのに、振り出しに戻ってしまった。朝夕の体温は平熱になり、あれほど苦しんだ長時間の空咳もない。3度の食事をしっかり食べているし、十分な睡眠もとれている。