かつては摘出も…がんになりにくい「脾臓」は残した方がいい
■免疫機能が落ちるリスクがある
進行した胃がんの手術でのお話です。日本では、脾門部のリンパ節転移があり、胃全摘を必要とする患者では、リンパ節と脾臓の摘出も一緒に行うことで治癒が見られたため、脾摘は標準的な手術(D2郭清)、胃全摘術の一部と考えられてきました。しかし、リンパ節は切除しても脾摘が必要なのかどうかを検討するため、脾摘をする群と、脾臓を残す群との無作為(くじ引きのようにしてどちらに当たるか分からない)比較試験が行われました。
その結果、両群で全生存期間に差はなく、むしろ術後合併症の発生割合は脾摘群で多かったのです(30・3%対16・7%)。合併症の主なものは膵ろう、腹腔内膿瘍でした。しかし、術後の晩期合併症の発生割合は差がなく、全生存期間も両群に差はありませんでした。
結局、これまでの胃全摘標準手術の脾摘術群よりも、むしろ脾臓を残す群は安全性(合併症発生、出血)で優れ、脾臓は残した方が有効な治療法として、新しい標準治療となったのです。