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佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

かつては摘出も…がんになりにくい「脾臓」は残した方がいい

公開日: 更新日:

免疫機能が落ちるリスクがある

 進行した胃がん手術でのお話です。日本では、脾門部のリンパ節転移があり、胃全摘を必要とする患者では、リンパ節と脾臓の摘出も一緒に行うことで治癒が見られたため、脾摘は標準的な手術(D2郭清)、胃全摘術の一部と考えられてきました。しかし、リンパ節は切除しても脾摘が必要なのかどうかを検討するため、脾摘をする群と、脾臓を残す群との無作為(くじ引きのようにしてどちらに当たるか分からない)比較試験が行われました。

 その結果、両群で全生存期間に差はなく、むしろ術後合併症の発生割合は脾摘群で多かったのです(30・3%対16・7%)。合併症の主なものは膵ろう、腹腔内膿瘍でした。しかし、術後の晩期合併症の発生割合は差がなく、全生存期間も両群に差はありませんでした。

 結局、これまでの胃全摘標準手術の脾摘術群よりも、むしろ脾臓を残す群は安全性(合併症発生、出血)で優れ、脾臓は残した方が有効な治療法として、新しい標準治療となったのです。

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