大腸がんの同僚を診た医師が自分の腹部にも痛みが出始め…
その地域では中核となるB病院の総合診療科に勤務するA医師(56歳・男性)のお話です。
患者からの信頼が厚い医師で、病院職員からもとても慕われ、B病院の「ベストドクター」に選ばれたこともあります。
ある年の春、A医師は内科系学会のシンポジウムの演者に指名されました。専門誌からは原稿の執筆を依頼されたのですが、締め切り日になっても原稿が3本も残っていたため焦っていました。しかも、2カ月後にはひとり娘の結婚式を控えていたのでなおさらです。
そんなある日、看護師長から相談がありました。「病棟で一緒に働いているG看護師が腹痛を訴えているから診察してほしい」というのです。
G看護師(35歳・女性)は2カ月ほど前から便秘気味で、1カ月前からは時々左下腹部が痛むといいます。
A医師がとりあえず処置室で腹部を診察したところ、左下腹部に筒状の塊が触れました。腸内の便がたまった状態だけならば、これほど腫れることは考えにくい……。A医師は超音波装置を運び入れ、痛む下腹部に端子を当ててみました。