「アスピリン」の意外な効果 大腸がんの予防薬になるか?
実はアスピリンが、大腸がんの前がん病変である大腸ポリープの発生を抑制することは複数の研究で証明されている。欧米では3~4年飲めばポリープの発生リスクを20%減らせるというコンセンサスができており、2016年には米国予防医学専門委員会が大腸がん予防のために低用量アスピリンを毎日服用することを50~60代に推奨。
日本でも武藤医師らが日本人対象の研究を行っており、大腸ポリープを内視鏡で摘除した患者311人に低用量アスピリン1日100ミリグラムを2年間服用してもらったところ、ポリープの発生を40%減少できたことを14年に発表している。
この時の対象患者はFAPではなかったのだが、武藤医師らは「複数個の大腸ポリープができる人に低用量アスピリンが有効なら、FAPにも効果があるのでは」と当時から考えていた。
「大腸がんの発がん経路は3つあり、最も多くを占めるのがポリープを母地として発がんする経路です。これはFAPによる大腸がんであっても、一般の大腸がんであっても共通しています」
「ポリープを母地として発がんする経路」とは、がん抑制遺伝子であるAPC遺伝子の変異で正常粘膜にポリープができ、次にがん遺伝子が活性化してポリープが大きくなり、さらに炎症が別の遺伝子変異を招き、やがてポリープが、がん化するというもの。