患者の旅立ち後、残された家族にとってもペットが心の支えに
前回、「ペットと一緒に療養生活を送れるのも在宅医療ならでは。ペットが患者さんの心の支えになっている」といった話を紹介しました。
最近亡くなった患者さんのカルテに、奥さまのこんな言葉が記されていました。それは、「猫はね、やっぱり分かっているのかな。いつも主人がいた椅子に座らないですね」というもの。
患者さんが旅立っていった後、残されたご家族の抱える喪失感の大きさは計り知れないものがあります。
ただ、もしそこに患者さんに常に寄り添い、一緒に過ごしてきた喪失感を共有できるペットがいたなら、ご家族の方にとっては大きな救いになるのではないかと思うのです。
91歳の男性で奥さまと2人暮らしの患者さんがいました。寒い季節になると、猫を抱っこして床に就くのが日課というほどに、日常生活に猫が潤いと温かさを与えていました。
ある日、聴覚の衰えを訴えられたので、試しに補聴器の貸し出しをしました。すると、大きかった地声が小さくなり、TVの音量が下がっていきました。そして今まで意識していなかった猫の爪研ぎの音や、かすかな鳴き声が聞こえるようになったと、患者さんが大変喜ばれたことが、今でも思い出されます。