患者の旅立ち後、残された家族にとってもペットが心の支えに
また82歳の女性の患者さんは、小型犬をペットとして飼っていました。歩行器を使いながら散歩に犬を連れていっていたのですが、時に駆け回る犬を捕まえようとして、ゼーゼーハーハーと息が上がることも。そんな犬との日常を送る患者さんが笑いながら話していたことが印象に残っています。
「もう寿命なのかなって思っているけど、ルイ(ペットの犬)がいるから頑張らないとって」
55歳のアルコール性肝硬変の男性の患者さんもいました。看護師だった奥さまとお子さん、要介護2の患者さんのお母さまといった3世代と大型犬1匹のお宅でした。患者さんを中心にした仲の良いご家族でしたが、ご本人は病気であるにもかかわらず、お酒を飲み、たばこも吸うといった生活を送っていました。奥さまはそんなご主人を見かねて入院させるものの、ご本人が「病院は嫌だ」と言って強引に退院。これまで何度か入退院を繰り返してきたということでした。
ところが本格的に在宅医療が始まると、リビングに3世代と犬が仲良く集まり、おしゃべりをしたり、テレビを見たり、食事をしたり。そんなだんらんを2カ月ほど過ごし、最後は笑顔で旅立っていきました。そして、そんな患者さんとご家族の傍らにはやはり、愛犬が最後まで別れを惜しむかのようにたたずんでいたのが印象的でした。
患者さんとペット、そしてご家族とペットとの関係を見ていると、在宅医療を進める中でペットが果たす役割が決して小さくないことを痛感させられます。ペットは患者さんにとってだけでなく、ご家族にとっても、心の支えとなる大事なパートナーなのです。