著者のコラム一覧
佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

乳がんで妻を亡くし「時間が解決してくれる」と言われたが…

公開日: 更新日:

 葬儀も3人だけの家族葬で済ませました。奥さまには姉がいますが、北海道に住んでいて来られませんでした。電話で亡くなったことを伝えた時、「コロナだから行くことができない。5年間、大変でしたね。ご苦労さまでした」とねぎらいの言葉をかけられました。

 息子と娘は、3泊してそれぞれ暮らしている仙台と名古屋に帰っていきました。それからは、Aさんひとりになりました。自宅に残ったのは、机の上に置いた白い布で包まれた骨箱、遺影、斎場から持ち帰ったお花だけです。ろうそくをつけ、線香をあげ、リンを鳴らすと、チーンという音が長く響きました。

 先日、奥さまの姉がまた電話をくれました。4年前に夫を亡くしており、いまはひとり暮らしです。

「Aさん、大丈夫? 落ち着いた? 行かなければと思ったんだけど、やっぱりコロナがね……」

 姉の声は奥さまにそっくりで、思わず涙が出てきました。

 姉は、「時間が解決してくれるから……。私なんか、夫が死んで一周忌が過ぎてから、やっとひとりに慣れてきたわよ」と言ってくれます。ただ、いまのAさんにとって「時間が解決してくれる」との言葉は、その通りだと思いながらも何だかとても冷たく響きました。「時間」と言われても、いまは一日をとても長く感じています。奥さまを見舞うため病院に通っている時は、一日が長いなどと考えたこともなかったのに……。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    相撲協会の逆鱗に触れた白鵬のメディア工作…イジメ黙認と隠蔽、変わらぬ傲慢ぶりの波紋と今後

  2. 2

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    《2025年に日本を出ます》…團十郎&占い師「突然ですが占ってもいいですか?」で"意味深トーク"の後味の悪さ

  5. 5

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  1. 6

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  2. 7

    結局《何をやってもキムタク》が功を奏した? 中居正広の騒動で最後に笑いそうな木村拓哉と工藤静香

  3. 8

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 9

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 10

    高校サッカーV前橋育英からJ入りゼロのなぜ? 英プレミアの三笘薫が優良モデルケース