著者のコラム一覧
佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

可能性があったはず…「縦隔腫瘍」だった若者をいまも思い出す

公開日: 更新日:

 約35年も前のお話です。当時23歳だったFさん(男性)は、就職した会社の2年目の健診で胸部X線に異常影を指摘され、胸部外科に来院されました。X線検査の写真では、前縦隔(心臓の前、両側肺の間)に径8センチの大きな腫瘤を認め、上大静脈を圧迫していました。

 呼吸器外科医は手術不能と判断し、私が勤務している内科(化学療法科)での診療を依頼してきました。腫瘍の針生検検査では、がん細胞を認めています。

 呼吸器外科医は、すでにFさんの父親に「このままでは長くは持たないと思います。覚悟をしておいてください」と告げていました。当時、この病気はいかなる治療でもほとんどが助からない時代でした。

 化学療法科に転科されてきたFさんは、頚が太くなっているのが一目で分かります。私は、Fさんの父親に「がんの大きくなるスピードが速く危険な状態です。抗がん剤治療ができるギリギリと思います。何とか良くなるように頑張ってみましょう」と、治療の了解をとりました。父親は覚悟はできているようでした。

「点滴などが続くが頑張ろう」という私の言葉に、Fさんは「よろしくお願いします。先週から首や顔が腫れて苦しいです」と話されました。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇