予後宣告は3カ月…自宅で思う存分の「口げんか」すら愛おしい
これまでなんとか車椅子で通院をしていたのですが、少し前から息切れをするようになり、院内での独歩も怪しく、在宅医療を開始されました。病院からの申し送りによれば予後3カ月。自宅に戻られてからは、終日布団の上で過ごしながら、トイレなどは辛うじて自力でできているとのこと。
奥さまがこっそり私に言いました。
「実は、あの人を自宅で見るのは不安だったの」
元板前さんだという旦那さんは職人気質。頑固で気の強いところがあり、日頃から奥さまとの間で口げんかが絶えず、随分と苦労された経験から、そんな旦那を果たして介護することができるのかという思いだったといいます。
実際に在宅医療を開始早々、患者さんのお兄さんが我慢できずに、2人に激しく意見する場面に遭遇することになります。
「夫婦の会話でお互いカッカして大変なんですよ、先生。おまえも少し病人らしくしなさいっての、そしてあんただってもっと病人に優しくしなさいって。なんのために60年間一緒にいたんだよ、いい加減にしろ、そんなこと言って」