予後宣告は3カ月…自宅で思う存分の「口げんか」すら愛おしい
「もう私だめ、こんなにつらいことできない」
そう言って部屋を飛び出していく奥さまを尻目に、旦那さんは布団をかぶってただ黙っているのみで、私もどうすればいいのか困惑したことを覚えています。
後から聞いたことですが、当初、患者さん自身が奥さまの苦労を考えて入院も考えたそうです。しかし予後宣告を3カ月とされ、残された時間を自宅で過ごしたいという思いが高まり、延命措置も断って自宅で最期まで過ごすことを選ばれたのでした。
ひょっとして、そんな奥さまとこれまで通り口げんかをして、自分の家で過ごしたいという思いだったのかも。自宅にいないと家族とけんかもできないのですから。
1カ月ほど経ったある日、奥さまが私にぽつり。
「一番可哀想なのは声が出ないことね。言いたいことも言えないから」
看取られるその時まで、思う存分口げんかして欲しい。そう願わずにはおられませんでした。