がんと闘うための4つの最新データ 医療情報学教授が分析
“海なし県”は年齢調整死亡率が低い
日本人は均質で、医療の地域差も小さいと言われているが、都道府県別のがん年齢調整死亡率を見ると、かなりの違いがある。
図は75歳未満の男女合計の年齢調整死亡率だが、北関東・中部・関西の日本海側などで低くなっていることが分かる。男性では、海なし県(内陸県)の年齢調整死亡率が低くなっている。具体的には群馬県・山梨県・長野県・岐阜県・滋賀県・奈良県などで、最も低いのが長野県(人口10万人当たり67.9人)である。
逆に日本列島を北に行くほど、西に進むほど、がん死亡率が上昇する。男性で最も高いのは青森県(同113.7人)で、長野県の約1.7倍となっている。つまり青森県の75歳未満の男性は、長野県の同世代の男性よりも、がんで亡くなるリスクが70%も高い。
女性は男性とやや異なり、甲信越と琵琶湖周辺、そして中国地方などが低く、北海道や東北が高くなっている。年齢調整死亡率が一番低いのは福井県(同42.5人)で、一番高いのはやはり青森県(同64.5人)である。ただし男性ほど顕著な偏りは見られない。
青森県は特殊だが、男性では海なし県と東北や九州とで、がん死亡率が1.2~1.3倍違っている。その理由は分かっていない。海なし県には、全国的に有名ながん専門病院はほとんどない。それどころか医師不足が深刻である。
偶然なのか、環境なのか、縄文人と弥生人の混血の度合いなのか、いろいろなことが考えられる。時間があれば、独自の仮説を考えてみるのも、いい頭の体操になるだろう。