長寿研究のいまを知る(1)なぜ、人は老いて死ぬのか
ほかにも生活環境の改善、公衆衛生の改善、肉などの良質なタンパク質の積極的摂取による栄養改善、幼児・小児医療の進歩、冷蔵庫など家庭電化製品の普及などが寄与している。
とはいえ、人類の平均寿命は大幅に延びているものの、最大寿命はそれほど延びていない。事実、100歳以上は増えているものの、110歳以上の人は極端に少なくなり、115歳の人はほとんどいないことがわかっている。
現在では、急速な医学の進歩によって、寿命に影響し得るさまざまな要因がより明確になると同時に、そのメカニズムが遺伝子レベルでも解明されつつある。
つまり現代は、人類の寿命に対する考え方の大きな転換期にあるとも言える。今後、加速する長寿研究によって、最大寿命が150歳から180歳、平均寿命120歳という時代へと変遷していく可能性もある。少なくとも世界中の長寿研究者の多くは、期待も込めてそう考えている。そこで、長寿研究の現状についてハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師に聞いた。
「老化の定義は立場によりさまざまですが、一般的には『成熟期以降に起こる生理機能の衰退』を意味し、遺伝的な要因や外界からのストレスに対し、適応力が低下することで起きる変化と考えられています。なお、医学的には加齢と老化は別物で、前者は生まれてからの時間を言い、老化は加齢に伴う生理機能の衰退や適応力の低下を指します」